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The TRC News,

201608-05 (August 2016)

生体適合性ポリマー中の吸着水解析
-吸着水の状態・水和構造・運動性-

構造化学研究部 中田 克、石田 宏之

要 旨 医療機器材料に広く用いられているポリビニルピロリドンを対象として、その水溶液を示差走査熱
量測定や NMR 測定を用いて、ポリマーと相互作用した水の状態、構造、運動性を評価した。ポリマーと相互
作用した水にはさまざまな状態の水が存在しているが、
分析の観点からどのようにアプローチできるかにつ
いて紹介する。

中間水と生体適合性発現メカニズムの関係について
1. はじめに は今後の解決すべき課題であるが、本稿ではその課題
まで追究はせず、
“中間水がタンパク質の水和水が近傍
人工腎臓などの医療機器において抗血栓性や低生体刺 水との接触を妨げることで生体適合性が発現する”と
激性のような“生体適合性”は重要な性能の一つであ いう仮説に基づき、ポリマーが中間水をどれくらい保
る。しかし、生体適合性の発現メカニズムは未だ解明 有できるか、その中間水の状態(構造、運動性)はどの
されておらず、医療分野における重要なテーマとなっ ようなものか、の観点から示差走査熱量(DSC)測定お
ている。 よび核磁気共鳴(NMR)測定を用いた分析アプローチ方
ポリマー材料表面の近傍では、ポリマーと相互作用 法について紹介する。対象ポリマーは、生体適合性ポ
した吸着水層が形成されている。吸着水はポリマーか リマーとして広く医療機器に用いられているポリビニ
らの相互作用距離によって近傍水と中間水に分類され ルピロリドン(PVP)を用いた。
る。また、ポリマー表面から遠く離れ、ポリマーと相
互作用していない水は自由水として存在し、通常のバ
ルク水と同様の挙動をとっている。一方、血液中のタ
ンパク質は周囲を取り囲む水分子との相互作用(溶媒
和、水素結合)によって安定な折り畳み構造を保ってい
る。医療機器のポリマー材料表面でタンパク質の水和
水は表面近傍の吸着水を介して接触し、その際に水和
水の構造が乱れることで、タンパク質の折り畳み構造
が壊れ、タンパク質同士の凝集・変性が生じ、その後 図 1 ポリマー表面の吸着水と血栓形成メカニズム
変性タンパク質への細胞の接着・活性化が起こること
で血栓が形成されると考えられる(図 1)。したがって、
ポリマー材料表面における吸着水、特に中間水の状態 2. PVP とタンパク質の相互作用
が、生体適合性の発現に大きく寄与しているとして注
目されている 1)。 PVP と水分子の相互作用の評価方法について紹介する

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前に、まず PVP とタンパク質の相互作用を等温滴定カ 定される。なお、この結果は上述のタンパク質の水和
ロリメトリー(ITC)によって評価した結果を紹介する。 水構造が乱れることで、タンパク質がポリマーへ吸着
ITC は分子間の相互作用にともなう熱変化を調べ、 する仮説を支持するものである。
結合の強さ(結合定数 Kd)、結合比 n、エンタルピー変
化∆H およびエントロピー変化∆S を測定する手法であ
る。∆H、∆S の熱力学的プロファイルから分子間の結 3. PVP と水分子の相互作用
合様式を推定することができる。対象タンパク質とし
てウシ血清アルブミン(BSA)を採用して、BSA と PVP 上述のようにポリマーと相互作用した水分子は近傍水、
の相互作用を評価した。図 2 に等温滴定曲線、図 3 に 中間水、自由水に分類される。自由水はポリマーとは
ITC の結果得られた熱力学的プロファイルを示す。 相互作用しておらず、周囲を水分子に取り囲まれた通
常の水として振る舞っている水である。したがって、
通常の水と同様に 0 ºC 以下で周りの水と強く水素結
合を形成して氷晶化(凍結)し、分子運動も止まる。一
方、近傍水はポリマー近傍でポリマーと強く相互作用
しており、そのため通常の水のような綺麗な水素結合
を形成することができず、低温でも凍結せず、分子運
動も止まらない、
すなわち不凍水として存在している。
“低温”の定義は研究分野や測定手法などでさまざま
であるが本稿では-60 ºC でも凍結しない水を不凍水と
して定義する。中間水は自由水よりも強く、不凍水よ
りも弱く、ポリマーと“中間的な相互作用”をしてい
図 2 BSA 水溶液への PVP 水溶液の等温滴定曲線 る水として定義される。0 ~ -60 ºC の範囲で凍結・融解
する水、あるいは同温度域で分子運動が止まったり、
動き出したりする水を中間水として定義する。

図 3 PVP と BSA の相互作用における


熱力学的プロファイル
図 4 水の状態のイメージ
その結果、Kd = 2.5 × 10 M、n = 0.86、∆H = 8.2 kJ mol 、
-5 -1

-T∆S = -34.4 kJ mol-1であった。結合様式としてはエン このようにポリマーと相互作用した水分子は、その


トロピー増加が支配的な相互作用であり、すなわち 相互作用の強さに起因して融点や運動性が変化してお
PVP や BSA の脱水和や BSA の構造崩壊による り、DSC 測定では水の凍結・融解時の熱収支の観点か
PVP-BSA 間の疎水性相互作用によって結合すると推 ら、NMR 測定では、水分子の運動性の観点から水分
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子の状態、量を評価することができる。
DSC や NMR の他に一般的な中間水の分析としては、
赤外やラマン分光による水素結合状態、X 線回折や中
性子散乱による水和構造、
誘電緩和やテラヘルツ分光、
中性子準弾性散乱による運動性の評価が挙げられる。

2)
3.1 DSC 法による水の状態・量解析
図 5 に 67wt%の PVP 水溶液について測定した昇温過程
の DSC 曲線を示す。測定条件としては、まず-60 ºC ま
で-20 ºC /min で降温したのち、0.3 ºC /min で昇温した。
図 6 PVP 水溶液における DSC 曲線の
含水率依存性(昇温過程)

26wt%や 40wt%の低含水率の水溶液では融解ピーク
はほとんど観測されておらず、これらの含水率ではほ
ぼ水分子は不凍水としてのみ存在していると考えられ
る。含水率を増やすにつれて、氷の融解ピークが観測
されるようになり、中間水や自由水が増加しているこ
とがわかった。また、Tgが低下していることから PVP
の運動性が含水によって高くなったと考えられる。特
筆すべきは 51wt%では-45 ºC 付近に低温結晶化による
図 5 PVP 水溶液(67wt%)における 特徴的な発熱ピークが観測されていることである。九
DSC 曲線(昇温過程) 州大学 田中教授らは生体適合性が優れたポリマーで
は、一様にこの低温結晶化を示す水が存在することを
DSC 曲線に見られる吸熱ピークは中間水あるいは 見出している 1)。
自由水の融解によるものである。融解ピークのうち 0 DSC 曲線から融解熱量(融解ピーク面積)と融解ピー
ºC 以下の面積から中間水、0 ºC 以上の面積から自由 ク温度 Tmおよび Tgを評価した結果を図 7 と図 8 にそ
水がそれぞれ定量できる。67wt%では 0 ºC に融解ピー れぞれ示す。
クは観測されず、自由水は存在していないことがわか
った。また、不凍水は降温過程において凍結していな
いため、融解ピークとしては観測されず、試料の全水
量と融解ピークから求めた中間水、自由水量の差を求
めることで不凍水量を評価できる。また、-25 ºC 付近
に階段状の吸熱が観測されており、これは非晶質固体
の流動性が急激に増大して液体に転移する際に生じる
ガラス転移と呼ばれる現象である。一般に水のガラス
転移温度 Tgは-140 ºC と低温であるため、これは含水
によって可塑化した PVP のガラス転移であると考え
られる。Tgが低温で観測されるほど、より低温でも分
子が流動性を示すということになるため、ポリマーの 図 7 融解熱量の含水率依存性
運動性を示す指標になる。
図6 に含水率をさまざまに変えたPVP 水溶液のDSC
曲線を示す。
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図 8 融解ピーク温度 Tmとガラス転移温度 Tgの


含水率依存性

図 7 の融解熱量の含水率依存性から、約 50wt%より
低含水率では融解熱量がほとんど観測されず、ほぼ不
凍水のみが存在していることがわかった。
50wt%から含水率が増加するにつれて融解熱量が増
加しているが、80wt%以下では Tmが 0 ºC よりも低温
のため(図 8)、50 ~ 80wt%では不凍水と中間水のみが存
在し、80wt%より高含水率で自由水が出現し始めると
考えられる。 図 9 PVP 水溶液(67wt%)における重水の
2
ここで、ポリマーが保有できる吸着水についてより H-NMR スペクトル
イメージしやすくするために、下式を用いて含水率
x(wt%)から算出されるモノマー当りの水和数 nw を導
入する。

xM p
nw =
(100 - x) M w

Mpはポリマーのモノマー分子量(PVP では 111)、Mw
は水の分子量(=18)である。したがって、PVP は 50wt%、
すなわちモノマー当り 6 個の不凍水と 50~80wt%、す
なわちモノマー当り 13 個の中間水を保有できるポリ
マーであると言える。

2 2
3.2 温度可変 H-NNR 法による水の状態・量解析 図 10 H-NMR による PVP モノマー当りの
110 ºC で1晩真空乾燥させたPVP に重水を吸着させて 可動水分子数の温度依存性
2
67wt%に調製した試料の温度可変 H-NMR スペクトル
を図 9 に示す。2H-NMR で重水を測定すると、水分子 36wt%と 67wt%に調製した PVP 水溶液について得
が速い回転運動を行っているとシャープな NMR シグ られた 2H-NMR シグナル強度から計算したモノマー当
ナルが観測される。温度低下によって水の(回転)運動 りの可動水分子数の温度依存性を図 10 に示す。67wt%
性が低下すると、重水ピークがブロード化して、シグ について詳しく見ると、冷却過程において重水の融点
ナル強度が減少する。このシグナル強度から動いてい (4 ºC)より低温でも可動水分子数は変化せず、-10 ºC で
る水を定量することができる。 急激に 4 個まで減少し、その後緩やかに減少する挙動
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が確認された。-60 ºC まで冷却しても 1 個弱の水分子
が動ける状態で存在していることがわかり、これは不
凍水として存在していると考えられる。一方、昇温過
程では-10 ºC 付近までは冷却過程に沿って可動水分子
数が増加し、その後、冷却過程の曲線から離れて比較
的緩やかに可動水分子数が増加する、履歴効果(ヒステ
リシス)が観測された。DSC の結果から 67wt%では自
由水は存在しておらず、不凍水が約 1 個、残りが中間
水であると推定されるが、-10 ºC を境にしたヒステリ 図 11 各含水率における PVP 水溶液の
13
シスを示す中間水と示さない中間水では、PVP との相 C-NMR スペクトル
互作用が異なっていると考えられる。
本稿では便宜上、
前者を中間水①、後者を中間水②として区別する。 各ピークに示したアルファベットは PVP 構造式の
36wt%は中間水①は存在しない含水率であり、したが 各炭素原子に対応している。炭素 b~f(ピロリドン環の
って、ヒステリシスは観測されなかった。 CH 炭素、主鎖の炭素)由来のピークの化学シフトは含
同様の含水率の DSC 曲線と比較すると、67wt%にお 水率によりまったくシフトしていないのに対して、炭
2
いて-10 ºC 付近で、DSC では融解し始め、 H-NMR で 素 a(カルボニル基)由来のピークの化学シフトは含水
は急激に可動水分子数が増加するといった類似挙動を 率に対して敏感に変化していることがわかる。これは
示しており、両手法間で類似な水の挙動を捉えられて カルボニル炭素原子の電子遮蔽状態が水和により変化
いることがわかる。一方、67wt%における DSC 曲線の することで、化学シフトの変化として観測されたもの
-10 ºC以下の範囲や40wt%の DSC曲線では有意な融解 である。すなわち、本測定において、化学シフトの変
2
が観測されないが、 H-NMR では有意に可動水分子数 化が顕著に観測されたアミド基への水和が支配的であ
の変化が捉えられており、両手法の観測対象(DSC:水 ると結論付けられる。
2
の融解、 H-NMR:水の回転運動)の違いから、異なる 上述の 2H-NMR の結果から、
14wt%では不凍水のみ、
水の挙動を評価していることも示唆される。また、温 35wt%では中間水②と不凍水、66wt%ではさらに中間
度可変 2H-NMR の結果からは、不凍水約 1 個、中間水 水①が存在することがわかるが、比較的 PVP と強く相
②が 3 個、中間水①が 7 個以上と結論付けられ、水の 互作用しているであろう不凍水や中間水②だけでなく、
状態解析においても DSC とは異なる結果を示した。 中間水①もアミド基へ優先的に水和しているというこ
これは DSC では融解に関わった水の熱量を観測し とが明らかになった。
2
ているのに対して、 H-NMR では水分子の回転運動に
着目して、分子レベルの局所的な動いている水分子を 3.4 磁場勾配 NMR 法による水の拡散係数解析
観測しており、中間水などポリマーに拘束され運動性 磁場勾配 NMR では、水の並進自己拡散係数を評価す
が低下した水については 2H-NMR の方が敏感に観測で ることができる。図 12 に 36wt%と 66wt%について磁
きていると考えられる。 場勾配 NMR 測定を測定して求めた拡散係数と、純水
この手法間の差異を相補的に議論することで、中間 (自由水)の拡散係数の文献値 3)を併せて示す。簡単のた
水のマクロ(融解)からミクロ(分子運動)における階層 めに 36wt%では中間水②、66wt%では中間水①の拡散
的な状態を詳細に評価できる可能性がある。 係数が評価できていると考えると、拡散係数は自由水
が最も速く、次いで中間水①、中間水②の順で遅くな
13
3.3 C-NNR 法による水和構造の推定 っていることがわかった。
ポリマーと相互作用した水がポリマーのどの官能基と
相互作用しているかはポリマー選定や設計に大きな指
針を与えると考える。図 11 には含水率をさまざまに変
えた PVP 水溶液について測定した 13C-NMR スペクト
ルを示す。
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4. おわりに

生体適合性と中間水の関係について明確な関係性は未
だ明らかになっていない中で、本稿では中間水の生体
適合性発現メカニズムにおける働きを仮定して、中間
水にどのように分析アプローチするかについて述べた。
本稿で詳しく説明した以外に各種分光法や誘電緩和、
X 線・中性子散乱を用いた分析アプローチも行ってい
く予定である。
TRC では、今後、さらに多種の生体適合性ポリマー
について分析経験を培うことで、中間水がいかに生体
図 12 PVP 水溶液における水分子の 適合性発現に寄与しているかを実証できると期待して
拡散係数のアレニウスプロット いる。

図 12 は縦軸が拡散係数の対数表示、横軸が温度(K) 引用文献
の逆数となっており、すなわちアレニウスプロットと 1) 田中 賢, 化学と教育, 60 巻 6 号, p.250 (2012).
なっている。このアレニウスプロットの傾きから、拡 2) Y. Furushima, et al., Thermochimica Acta, 538, 43
散の活性化エネルギーEaを評価することができる。 (2012) .
3) M. Holz, et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 2, 4740
D = D0 exp(- E a /RT )
(2000) .
求めた活性化エネルギーを表 1 に示す。中間水①と
中間水②ともに自由水よりも大きい活性化エネルギー 中田 克(なかだ まさる)
を有しており、拡散に際してそれだけ大きいバリアを 構造化学研究部
乗り越える必要があることがわかる。水分子が拡散す 構造化学第 2 研究室 研究員
るとき、まず周囲の水分子や官能基との水素結合を切 趣味:バレーボール、ダイナミクス
って、
その後新たな水分子や官能基と水素結合を結ぶ、
ということを繰り返しながら拡散していく。今回評価 石田 宏之(いしだ ひろゆき)
した活性化エネルギーが水素結合の切断エネルギーに 構造化学研究部
相当していると考えると、中間水①や中間水②は PVP 構造化学第 2 研究室 研究員
のアミド基と水素結合を結び、
運動が拘束されており、 趣味:旅
その水素結合の強さや運動の拘束の度合いは中間水②
の方が強いことが示唆される。

表1 拡散の活性化エネルギー
含水率 活性化エネルギー
水の状態
/wt% / kJ mol-1
36 中間水② 39
66 中間水① 28
100 自由水 20

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